茨城県久慈郡八溝地域、山梨県甲府市黒平地域、同北巨摩郡増富地域、新潟県佐渡島西三川地域において、漂砂金の産状調査および周辺の地質調査を行った.現地で採取した川砂中の重鉱物を室内で処理して、それぞれ、数〜数10粒の漂砂金を回収した.実体顕微鏡、光学顕微鏡および電子顕微鏡により、鉱物の粒径、形状、表面の形態的特徴、反射特性および包有鉱物の性質について予察的に検討した.その結果、上流地域のものほど粒径が小さく表面に凹凸が著しいこと、外形および内部構造から見ていくつかの金粒が合体して現在の漂砂金をなしている場合が多いこと、などが明らかになった.また、化学組成的には、金および銀以外の元素を含まないこと、多くの場合、リムの部分で高金含有量を示すものが多いことが明らかになった.現在、さらに詳細なデータを集積中である. 漂砂金の産する場所には脈状石英を伴うことが多く、これらの石英は漂砂金をもたらした原鉱脈を形成していた可能性が高い.これらの石英中には、微細な流体包有物が認められる.包有物は気液2相からなり、液相比の高いものであることが判明した.これらの流体包有物が金の生成と関係したものであれば、その物理化学的環境を推定することが可能になる. 設置した加熱冷却顕微鏡載物台の性能特性試験を行った.とくに、測定値の温度特性および再現性のチェックをおこない、測定精度および再現性が極めて高いことがわかったた.これに基づいて、漂砂金粒と共存する脈石英中の流体包有物について、均質化温度および凍結温度を測定した.まだ、データの数は少ないが、これまで、周辺の関係鉱脈あるいは同時代と推定される鉱脈からの試料について得られている値とよい一致を示している.
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