研究概要 |
上部マントルかんらん岩とメルトとの相互反応をかんらん岩より読み取る研究を行い,以下の事実を明らかにした.1.かんらん岩とメルトの相互反応の産物である二次的メルトにはコンパティブル元素であCrとNa,Ti,水などのインコンパティブル成分が同時に濃集する.前者はかんらん岩中の斜方輝石よりもたらされ,後者は部分ゾーンメルティング的効果によりもたらされる.二次的メルトからの晶出物の代表的なものがクロミタイト(クロムスピネルに富む岩石)である.2.クロミタイトは中程度に枯渇したハルツバ-ジャイト(クロムスピネルのCr♯が0.4〜0.6程度)に特徴的に含まれる.多くの場合,クロムスピネルのCr♯が0.8前後であり,海洋的というより島孤的環境を示唆する.3.オマーン・オフィオライトなどのウエールライト,トロクトライト,ダナイトなどかんらん石に富む貫入岩(ガブロ,岩脈群に貫入)にはしばしばインコンパティブル成分(Ti,Na,水など)が濃集する.このような貫入岩はクリスタル・マッシュの固結物で,閉塞的なメルト通路での相互反応の産物が上昇,貫入したものである.4.太平洋ヘス・ディープで得られたかんらん岩-トロクトライト-ガブロ複合岩体もかんらん岩/メルト相互反応の産物である.これらの岩石のクロムスピネルには,そのTi含有量がMORB中のスピネルより高いものがかなりある.これらを含む岩石(主としてトロクトライト)は閉塞的な環境下で相互反応を受け,噴出しそこねたMORBからの固結物であろう.5.これらの結果は洪水玄武岩と海台玄武岩の組成の差を説明する.両者ともLIPをなし,巨大なプリュームに由来するものであるが,Tiなどのインコンパティブル元素の含有量が異なる(前者の方が高い).前者は厚いテクトスフェアのためより閉塞的な環境下でマグマを生成した.
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