研究概要 |
平成9年度は、おもに実際の物質についての解析・測定を行った。オケルマナイト固溶体[Ca_2(Mg,Fe)Si_2O_77]の不整合構造を5次元空間で解析し、詳細な結晶化学的な検討を行うとともに相転移についての検討を行った。それらの結果については国際学会(Aperiodic′97、フランス、1997年8月)で発表すると共に、論文を投稿中である。この物質の不整合構造の解析で結晶内部における金属元素の分布の異常が予想され、放射光の超強力X線(高エネルギー加速器研究機構、フォトンファクトリー)による散漫散乱の測定を試料結晶の異なった領域について行い解析を行っている。さらに、不整合構造の原因を明らかにするために、分子軌道法による構造シミュレーションを行っている。その他の物質としては、(1)Al、Feの水酸化物(α-AlOOH、α-FeOOH)の脱水過程における中間生成物につき、分担者の1人(荻谷)がハノーバー大学で散漫散乱の解析を進めている。その結果から、脱水反応過程の詳細が原子レベルで明らかになることが期待される。(2)上記の物質の他に、藍方石[Hauyne、(Na,Ca)_<4-8>Al_6Si_6(O,S)_<24>(SO_4,Cl)_<1-2>]の回折写真に散漫散乱をしめすものを見出した。この鉱物は特定の産地のものだけが長周期構造をもつことが知られており、他は長周期を示さないと考えられていた。長周期の衛星反射と見出された散漫散乱とは関連が認められた。また兵庫県南部地震に際し、淡路島で出現した断層で破砕された岩石が採集され、それらのX線粉末回折の測定で、著しい散漫散乱を与える物質の混入が認められた。散漫散乱を与えるのは粘土鉱物であり、層に沿った方向の乱れが明らかになった。
|