研究概要 |
初期太陽系星雲における高温過程における固体鉱物の蒸発,および冷却に伴うガスからの鉱物の再凝縮による元素および同位体の分別を温度・圧力に依存する時間の関数として解明するため、それらの関数として蒸発速度を実験的に求めた。前年度の研究により特定温度での蒸発速度が求められているフォルステライトについて、1500度から1800度の温度範囲で蒸発速度を求めた。研究の過程において、蒸発速度が鉱物の結晶方位に依存する異方性を示すことが明らかとなり、結晶軸に垂直な方向での速度を求めた。その結果、フォルステライトではc軸に沿った蒸発速度がもっとも大きく、a軸とb軸に沿う方向はほとんど区別がつかないことが明らかとなった。活性化エネルギーはc軸方向がもっとも小さく、融点に近づくほど異方性が小さくなる。また、MgO-SiO2系珪酸塩メルトの蒸発速度を求め、化学平衡計算の結果をもちいて解析し、カイネティックバリアがMgにくらべSiが数倍大きいことを明らかとした。さらに、太陽系の原物質の生き残りとして隕石からみいだされているSiCの蒸発を検討したところ、不一致蒸発してCが蒸発残渣として残ることがわかった。メルトとSiCに関しては従来まったく得られていなかった蒸発速度を求めたこと 蒸発における同位体分別から温度・圧力・時間の情報をえるため、固体内拡散を考慮に入れた蒸発による同位体分別のモデル化をおこなった。その結果、同位体分別がレーリー分別を仮定できる場合、拡散と蒸発の競合過程となる場合、拡散が反応律速となり同位体分別の観測されない場合があり得ることがわかった。実験により求められた蒸発速度をもちいて、3つのケースを粒子サイズと温度の関係において求めた。フォルステライトのMgは広い条件下で同位体分別が観測にかかる可能性があり、太陽系や星の周囲の環境の温度・圧力の履歴を解明する有力な物質であることがわかった。
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