研究概要 |
初期太陽系星雲の高温過程における固体鉱物の蒸発にともなう元素および同位体の分別を温度.圧力に依存する時間の関数として解明するため,フオルステライトとかんらん石(Fo92)をもちいた蒸発実験をおこなった.結晶軸に平行な定方位に切り出した箱形とした出発物質を用いた実験の結果、鉱物は蒸発に関し強い異方性をもつことが明らかとなった.表面は方位ごとに固有の微細構造を示し,転位密度に応じて固有の表面組織を示す.かんらん石はかんらん石構造を保ったまま蒸発するため,部分蒸発の結果,表面はよりMg,Caに富むようになる.一方Fe,Niは初生値より低くなる.表面組成は中心部に未反応部分が残っているかぎり一定時間の経過後定常状態に達し、初生値との比が固相・気相分別係数を求めることが可能となった。内部は拡散プロファイルを示し、蒸発が拡散に支配されていることを示している.蒸発による界面後退をともなう拡散方程式により実験結果を解析した結果、蒸発速度と拡散係数を求めることができた。拡散係数はMisner(1974)による低温での結果の外挿値よりやや大きい。この値の原因は(1)高温では拡散のモードが低温とは変化するためintrinsicな値として正しい、(2)真空中の蒸発では表面に空孔が発生して拡散速度が増大する、(3)蒸発速度の推定値が不正碓でその結果拡散速度も誤差を含んでいる、という3つの可能性がある。今回用いた方法は従来実験技術上の制約から困難であった拡散係数を求める上で画期的なものである。さらに、拡散をともなう蒸発における元素分別の-般的な関係を定式化することに成功したため、太陽系星雲における元素分別を温度、圧力、時間の関数として記述することが可能となった。
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