火山ガスの化学組成の連続測定は、火山ガス成分を含む大気では実用化しているが、大気へ放出する前の噴気口の測定で長期間安定なデータが得られた例はない。噴気口内の高温、高湿、酸性ガスと接して安定に作動する化学センサーが開発されていないためで、本研究では、前処理によって火山ガスから高温水蒸気を完全に除き、乾燥ガスにした後、CO_2、SO_2、H_2、O_2を連続測定する全く新しい方法を採用した。 平成7年度には装置の設計、組み立てを終了し、性能のチェックを行なったのち、東大理学部が伊豆大島火山のカルデラ内に掘削した観測用の蒸気井に設置し、観測を開始した。平成8年度は観測を行ないつつ、装置の特性を調べ、長時間の安定したデータが得られるための工夫を施してた。 観測開始後2年あまりの期間の伊豆大島の火山活動は平穏であり、得られた観測結果から火山活動が活発でない時期の変化を調べることができた。マグマ起源のCO_2は短い時間の変動を除くと夏高く、冬低い年周変動がみられた。夏のピーク濃度は年々下がっており、1986年の噴火後の火山活動の低下傾向と対応している。また、細かくみると大気圧の変化に約8時間遅れて逆相関がみられ、マグマ起源のCO_2と大気成分の混合のバランスが気圧により変化することが分かった。一方、H_2には年周変動はみられず、気圧の急激な降下時に1時間程度遅れて最大1000ppmに達するスパイク状の増加がみられ、マグマ起源のCO_2とは挙動が異なることが分かったが、H_2の起源を特定することは難しく、色々なアプローチで生成メカニズムを検討している。 伊豆大島での長期的な観測に加え、簡便化したCO_2、SO_2連続測定装置を阿蘇火山で数日間テストし、分オーダーの短時間の変化を捉えることができた。
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