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今年度はフェノール水素結合クラスター(フェノール水和クラスター、フェノール多量体)のOH伸縮振動スペクトルを測定し、クラスターの構造決定を決定することに成功した。具体的には赤外-紫外二重共鳴分光法を用い、フェノール水和クラスター(フェノール(H_2O)_nのn=1〜4までのフェノール側、水分子側のそれぞれのOH伸縮振動の赤外スペクトルを測定した。さらにab initio計算結果を行い、測定したスペクトルとの比較した結果、n【greater than or equal】2のクラスターはring構造が安定であり、ring構造クラスターではring内のOH基の伸縮振動は大きく振動数低下し、ringの外側のOH基の伸縮振動はほとんど変化せず、localモード的になっていることが分かった。
フェノール二量体、三量体では赤外およびRamanスペクトルを測定し、特に三量体においてOH伸縮振動が赤外スペクトルとRamanスペクトルとで強度交代を示すことからその構造がC_3回転軸をもつring構造であることを明らかにした。
今回の実験結果により、水素結合クラスターの構造決定にOH伸縮振動の観測が非常に大きな力を発揮することが明らかになった。また用いた赤外- 紫外二重共鳴分光法、誘導Raman- 紫外二重共鳴分光法が超音速ジェット中の希薄な気相分子クラスターの振動分光に有力な方法であることを実証した。さらに、水素結合クラスターのOH伸縮振動の振動スペクトルが溶液中でのOH伸縮振動のスペクトルに類似していることも判明し、本研究結果が液相、固相の水素結合構造の解明に重要な役割を果たすと期待される。
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