1.マスフィルタによる高温分子種の同定 分子量400までの分子の質量スペクトルを測定できる四重極質量分析計(マスフィルタ)を購入し、ゲートバルブとオリフィスを通して不安定分子生成系と結合した。測定した質量スペクトルをコンピュータでデータ処理できるようにプログラムを開発した。無水マレイン酸(固体)を加熱し、分解生成物をマスフィルタに引き込むことにより、系内に生成した分子を同定した。またトリメチルボロキシン(CH_3BO)_3の蒸気をパイレックス管を通して、熱分解炉中を通過させ、熱分解によるCH_3BOの生成を試みた。 2.サブミリ波スペクトルの観測 電極に含まれる金属原子のスパッタリングにより気相にとびだした金属と系内に導入したハロゲン原子との反応で生成した含金属多重項ラジカルの検出を行った。スパッタリングを行う分子としては塩素系では蒸気圧が高くない分子(例えば三塩化アルミニウム)を用いるのが有効であることを見出した。この方法によりCrCl(X^6Σ^+)、FeCl(^6Δ_1)、CrF(X^6Σ^+)、CoF(X^3Φ)およびNiF(X^2Π_<3/2>、^2Σ^+)のスペクトルを観測した。Cr化合物では、スピン-スピン相互作用およびスピン-回転相互作用に対する電子励起状態の寄与を検討した。NiFではΛ型二重項分裂の回転準位依存性が電子基底状態が^2Π_<3/2>であることを明らかにした。またこのΛ型二重項分裂は非常に大きく、^2Σ^+状態が基底状態からエネルギー的に近いことを示していた。CoFではΩ=4成分の遷移を観測し、超微細構造定数を決定した。また、ハロゲンを含む分子として、NBr、NIのスペクトルを観測し、四重極モーメントから結合のイオン性を検討した。さらにBBr_3の放電により短寿命分子種BBrの同じ系に酸素を加えてBrBOの回転スペクトルを初めて検出した。
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