研究概要 |
酸素の超高圧下(100GPa)の粉末X線回折実験を行った。 線源には放射光を用い、角度分散法で116GPaまでの粉末回折図形を得た。96GPaまでは従来60GPaまでの結果から知られているε-相と呼ばれる単斜晶の構造であったが、その圧力を境に新しい構造へと変化した。この構造も単斜晶で指数付けされるものであり、格子定数の異なる単斜晶-単斜晶の同形転移であった。この相転移圧は反射率の実験から報告されている絶縁体-金属転移とほぼ同じ圧力域であるため、金属酸素の結晶構造が初めて明らかにされたものと考えられる。相転移時に単斜角はほとんど変化はしないが、a,c軸が伸び、b軸が縮んだ。また、この相転移に伴う体積変化は非常に小さく(1.4%以下)、分子解離を伴う相変態とは考えにくく、酸素は分子性を保ったまま金属になったものと予想している。これは他の同族元素がいずれも分子解離を伴って金属化するのと対照的である。今後、ラマン散乱の実験から相転移のメカニズムを明らかにする予定である。
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