研究概要 |
1.ラマン分光による酸素の金属化のメカニズムの研究 前年度までに酸素の絶縁体-金属転移(96 GPa)における構造相転移を明らかにしたが、この転移のメカニズムを知るために転移圧を越える110 GPaまでのラマン散乱の実験を行った。低圧域では分子の伸縮モード(vibron)と分子軸の秤動モード(libron)、更にそれらの結合音が観測されたが、110 GPaでは何れのモードも検出できなくなった。これは固体酸素が単位胞に一原子のみを含む構造へ転移したか、金属化のため光を吸収しなくなった為かのどちらかと考えられる。また、vibronモードに関しては分子解離の前駆現象であるモードのソフト化は見られず、その振動数は単調に増加した。これらの結果から固体酸素の金属化はバンドオーバーラップによる分子金属化と結論された。 2.固体酸素の構造 固体酸素の絶縁体-金属転移(ε相-ζ相転移)が単斜相-単斜相の同形転移であることは、既に明らかにしたが、空間群についてはε-相も未だ確定はしていない。今回、C2/mを提案した。これは常圧低温相(α-相、C2/m)のa-, b-軸をそれぞれ二倍にしたものに対応している。 3. Se, CX_4(X=F, Cl, Br)の高圧下の相転移 メタン類似化合物の分子配向の違いによる構造相転移を明らかにした。また、ラマン分光の実験から分子解離圧の予想を行った。Seについては出発の分子構造の違いによる、分子解離と金属化に関する知見を得た。 現在、酸素のε-相については比較的大きな単結晶が得られるようになったので、詳しい構造解析と赤外吸収の実験から分子解離と金属化についての研究を続行する予定である。
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