LaF_3結晶中にドープされたPr^<3+>は可視領域に^1D_2(592.7nm)と^3P_0(477.9nm)の二つの長寿命の電子励起状態を持つ。これらの電子励起状態は液体ヘリウム温度で発光寿命が長く、Pr核の核スピン(I=5/2)によるMHz単位の微細構造が見られる。この微細構造を明らかにすべく多くの研究がなされてきた。しかし電子励起状態^3P_0(477.9nm)に関する研究は、励起波長が青色領域で超高分解CW色素レーザーが扱いにくい領域であるために、フォトンエコーなどのパルスレーザーを用いた研究に限られていた。我々は励起状態^1D_2(592.7nm)への遷移によるラマンヘテロダイン・光磁気二重共鳴測定をプロトタイプとしてその装置・手法の基礎固めを行った。また、この手法を励起状態^3P_0(477.9nm)への遷移に応用し、Pr^<3+>を囲む核の核四重極子共鳴(NQR)測定に成功した。 1.5Kに冷やした試料に、単一モード・色素レーザー光とラジオ波を照射する。ラジオ波が電子状態内の磁気遷移に共鳴すると、入射レーザー光と磁気副準位分だけ周波数の異なる発光が生じる。これを透過光の強度変調信号としてシリコンフォトダイオードで検出して、ラマンヘテロダイン信号を得る。レーザー光を^3H_4-^3P_0(477.9nm)に共鳴させると8.4MHzと16.7MHzに基底状態^3H_4におけるI=5/2のPr核のNQRが観測された。一方2.0-5.0MHzの周波数領域に、Pr核のNQR信号より二桁ほど強度の弱い信号が得られ、色中心Pr^<3+>と磁気双極子相互作用するホスト結晶内のLa核のNQR信号であると解った。その結果、Pr^<3+>核を囲む異なるサイトに位置するLa核の詳しい磁気的環境を調べることができた。
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