研究概要 |
ケイ素およびゲルマニウムクラスター化合物の合成と物性として以下の研究成果を得た。 1.2,6-ジイソプロピル基が置換したヘキサシラプリズマンの固体状態の^<29>Si NMRを検討し、構造に関する新たな知見を得た。静止状態の^<29>Si NMRスペクトルによって化学シフトテンソルをσ_<11>=98ppm、σ_<22>=18ppm、σ_<33>=-182ppmと決定できた。また、化学シフトの異方性の広がりは280ppmと極めて大きい値であった。主値の平均値は-22ppmであり、溶液中の化学シフト値の-22.3ppmに一致した。また、メチル置換のヘキサシラプリズマンのGIAO理論計算を行い、計算値と傾向が一致した。化学シフトテンソルの一つの成分が大きく高磁場シフトしている原因はヘキサシラプリズマンの三員環構造によることを明らかにした。 2.2,6-ジイソプロピル基が置換したヘキサゲルマプリズマンの光反応を検討した。ヘキサゲルマプリズマンを280nmより長波長の光を照射すると、ヘキサゲルマデュワ-ベンゼンに帰属できる吸収帯をUVスペクトルで342nm、446nmおよび560nmに観測できた。定常状態に達した後、520nmより長波長の光を照射するとヘキサゲルマデュワ-ベンゼンの吸収帯は瞬時に消失し、ヘキサゲルマプリズマンを再生した。差スペクトルより、この反応は完全な可逆反応であることを明らかにした。また、ヘキサゲルマデュワ-ベンゼンは熱的にもヘキサゲルマプリズマンを生成することを明らかにした。しかし、低温下でのみヘキサゲルマデュワ-ベンゼンは安定に存在し、120Kでその半減期は約3分であった。 三員環ゲルマニウム化合物のトリゲルマシクロプロペンの合成にも成功し、これを原料にして芳香族性2π電子系のシクロプロペニウムイオンのゲルマニウム類縁体の合成に初めて成功した。X線結晶構造解析による分子構造から完全に遊離なゲルミルカチオンであることを明らかにした。
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