研究概要 |
1.5配位1,2-オキサゲルメタニド、ゲルマニウム-Peterson反応中間体に関しては、前年度、ゲルマニウム上の置換基としてフェニル基を有する化合物について検討し、その合成およびX線結晶構造解析を行うことができた。本年度はその反応性および構造に及ぼす置換基の影響について調べるために、メチル基をゲルマニウム上に有する化合物について検討した。まず、Martinリガンドを有するβ-ヒドロキシゲルマン(-C_6H_4C(CF_3)_2O-)GeMeCH(CH_2-t-Bu)C(CF_3)_2OHを調製し、18-クラウン-6存在下、KHを作用させ、合成した。X線結晶構造解析からフェニル体と同様に歪んだ三方両錐構造をしていることが分かった。熱分解過程で見出した異性化の詳細について検討した結果、フェニル体の場合は通常のpseudorotation機構で進行するのに対して、メチル体はGe-O結合が開裂した後、再結合、pseudorotationを経て進行し、その際、結合解離が律速段階であると考えると実験事実を説明できることが分かった。この差異は置換基の原子的効果に因るもので興味ある結果であると考えている。2.5配位スピロ[3,3]型1,2-オキサホスフェタン、4-フェニル-1,5-ジオキサ-4λ^5-ホスファスピロ[3.3]ヘプタンについては計画通りに合成できた。まず、ジメチルフェニルホスフィンオキシドに2当量のn-BuLiを作用させ、ジリチオ体とし、これに過剰のカルボニル化合物を反応させてビス(β-ヒドロキシアルキル)ホスフィンオキシドを得た。これをAppel試薬(Ph_3P-CCl_4)を用いて環化脱水し、合成することができた。2,2,6,6-テトラキス(p-ニトロフェニル)誘導体は単離することができたが、テトラフェニル体、テトラキス(p-クロロフェニル)体は単離することができなかった。また、非対称化合物、2,2-ジフェニル-6,6-ビス(トリフルオロメチル)体も合成できたが、この化合物も湿気に対して敏感で単離には至らなかった。しかしながら、ジエチルフェニルホスフィンオキシドおよびp,p′-ジクロロベンゾフェノンを用い、2,2,6,6-テトラキス(p-クロロフェニル)-3,7-ジメチル体を合成したところ,三種類のジアステレオマ-を単離することができた。いずれもX線結晶解析に成功し、二つは少し歪んだ三方両錐構造を、一つは歪んだ四角錐構造を有することが分かった。単離できなかった化合物も合成時の反応混合物を加熱すると、一分子から二分子のオレフィンが生成するという興味ある結果が得られた。以上のように本研究計画は計画通り遂行することができた。
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