研究概要 |
先に、本研究者らは光学活性3-(1,4-ペンタジェニル)フェニルカルビノールの種々のジシラニルエーテルについてパラジウム錯体触媒による分子内ビス-シリル反応を検討し、生成物である三置換シラ・テトラヒドロフランを高立体選択的に合成することが出来た。この分子内ビス-シリル化反応ではオレフィンのジアステレオトピックな面選択が高度に制御されていることが注目される。こうして得た(R,R,R)-2-シラテトラヒドロフラン誘導体から出発して抗腫瘍性物質、(-)-アヴェナシオリドの全合成を達成した。先ず五員環上のビニル基をロジウム触媒によるハイドロボレーションし、つづいて酸化して相当する一級アルコールとしたのち、二つの炭素-ケイ素結合を酸化的に切断し、立体化学を保持したまま水酸基に変換した。水酸基の保護、脱保護の後、一級アルコールを酸化してビス-ラクトン化合物とし、一方のラクトン環にメチレネションとして効率的に(-)アヴェノシオリドを得た。本研究はシリル基がフッ素イオン存在下に酸化されて水酸基に変換できる。いわゆる「マスクされた水酸基」と見て、炭素-ケイ素結合の立体選択的形成から複雑な天然物の合成をアプローチする、新規合成ルートを示すものである。
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