研究概要 |
当初の実施計画にしたがって研究を行ない、以下に記す結果を得た。 1.ビシクロ[2.2.2]オクテンの縮環したデヒドロ[18]-および-[12]-アヌレンの合成と物性検討 2,3-ジエチニル-および、反応系内で発生させた2-プロモ-3-エチニル-ビシクロ[2.2.2]オクテンを出発原料として、それぞれCuI/amine/air、およびCuI/Pd(0)を用いるカップリング反応を用いて、3個のビシクロ[2.2.2]オクテン(以下BCOと略記)が縮環しD_<3h>対称をもつデヒドロ[18]-および-[12]-アヌレンを合成した。X線結晶解析の結果、[18]アヌレンおよび副生成物として得られた[16]アヌレンのπ電子系はそれぞれ平面構造および折れ曲がった構造をとることが明らかとなった。一方、cyclic voltammetry法を用いて酸化還元挙動を検討し、これらがいずれも可逆的な一電子移動を受けること、このように拡張されたπ電子系においてもBCO炭素骨格がσ-π共役効果により陽電荷を帯びた系を安定化することなどが確かめられた。 2.BCOの縮環したシクロオクタトリエンインの合成と構造変換 先に合成したBCO三量体の末端二臭化物のジリチオ化,ジスタニル化、さらに塩化オキサリルとの環化反応を経て、BCO縮環したシクロオクタトリエンジオンを合成したが、著しく不安定で脱カルボニル化により定量的にBCO縮環したベンゼン体に変化することが明らかとなった。これに関連してBCOの縮環したベンザインの構造変換についても検討した。 3.カルコゲン元素をもつ新しい電子移動活性種の合成 3個の2,3-ジブロモ-1,4-ジチアシクロヘキセンが縮環したベンゼンおよびこのユニットが連結したポリマーを合成し、その物性を検討した。
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