研究概要 |
2種類の非安定化リンイリド(Ph3P=CHR, R=Bu, 1-Adamantyl)と置換ベンズアルデヒドとのWittig反応について、反応性に対する置換基の効果、カルボニル14C速度同位体効果、および生成アルケンのシス/トランス比に対する置換基効果を競争反応によって測定した。また個々の反応について脱ハロゲン化プローブ実験ならびにエノン異性化実験を行った。その結果、Rの構造によって反応挙動が大きく異なることがわかった。すなわち、R=Buの場合には、カルボニル14C速度同位体効果や置換基効果が非常に小さいのに対し、R=1-Adamantylでは大きな置換基効果が得られた。た、31P NMRの測定の結果、R=Buではシスオキサホスフェタンのみが観測されたのに対し、R=1-Adamantylではシス、トランスの両異性体が観測され、それらの間の変換反応が見られた。脱ハロゲン化プローブ実験ならびにエノン異性化実験では両イリドの挙動はよく似ていた。以上の結果から、ベンズアルデヒドと非安定化イリドの反応は、電子移動を経て進行することが結論できた。またイリドの構造によって反応の律速段階が一電子移動の場合(R=Bu)とラジカルイオン対中間体の結合過程の場合(R=1-Adamantyl)とがあることも判明した。 リチウムエノラートと置換ベンズアルデヒドおよびベンゾフェノンとの反応について、反応性に対する置換基の効果、カルボニル13C速度同位体効果を測定し、さらに脱ハロゲン化プローブ実験ならびにエノン異性化実験を行い、その反応経路を判定した。その結果、リチウムエノラートの反応は、一電子移動を経て進むことが既にわかっているMeLiやPhLiなどの通常の有機リチウム次第の反応とは異なり、単純な極性求核付加機構で進行していることが判明した。一連の有機リチウム試剤の間の機構の変化が何に由来しているのか、現在検討中である。
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