二核錯体の配位構造が、例えば六配位一六配位、あるいは四配位(平面型)一四配位(平面型)と言ったもの、あるいは、四配位(平面型)一六配位(八面体型)構造のもの、つまり双方の金属イオンの配位構造が異なる二核錯体を合成する。この系列で考えうる全ての物を揃えようということが、本研究のひとつの主題である。 さらに本研究では、クロモトロピズムを中心とする新しい機能をもつ複核、多核の金属錯体を合成する。二核、三核、四核、五核、最大十核位までを自由に制御できる系を構築して行こうというのが次の研究のターゲットである。また、鎖状、環状、平面、三次元の構造規制も検討する。これらの錯体に付与される特性は、外的条件(たとえば溶媒、温度、圧力、光、電気、pH、等)に応答し、その構造、性質が様々に、かつ可逆的に変わりうるものを合成することを目的としている。観測できる現象は、種々のクロモトロピズム(サーモクロミズム、ソルバトクロミズム、ピエゾクロミズム、フォトクロミズム、エレクトロクロミズムなど)である。 研究は、3年度のわたるものである。初年度で明らかになったことは、複核錯体生成のために用いるテトラケトンの合成で、トリケトンが生成したこと。これを用いた混合錯体では、単核錯体のみが得られることが明らかになった。勿論この錯体は、興味あるソルバトクロミズムを示した。現在、その他のテトラケトンを用いて、第一遷移金属以外に第二遷移金属イオンの複核錯体の合成も検討し、いくらかの結果を得ている。
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