| 研究概要 |
生体系で酸素運搬体として作用しているヘムエリトリンやヘモシアニン,また酸素化触媒であるメタンモノオキシゲナーゼ(鉄および銅錯体)の機能モデルとして,二核鉄及び銅酸素(μ-パーオキソ)錯体の合成を行った。今年度は,銅(1)錯体による酸素の活性化と二核鉄酸素錯体の単離と構造および物性の解明の2点に重点を置いて研究を行い以下の成果が得られた。
銅錯体:三脚型四座配位子(tris{(6-methy1-2-pyridy1)methy1}amine:N4-Me3py)を含む銅(1)錯体([Cu(N_4-Me_3py)]^+)と酸素との反応により,配位子に組み込んだピリジル基の6位のメチル基がカルボキシル基にまで酸化されることを見いだした。この反応を低温で吸収スペクトルを用いて追跡したところ,溶液中では少なくとも2種類の反応中間体が存在することが明かとなった。この反応は銅含有メタンモノオキシゲナーゼのモデル反応として注目される。
鉄錯体:1.立体的に崇高いイミダゾリル基を含む二核化配位子(2,6[bis(3-methy1-4,5-diphenylimidazolylmethyl)aminomethyl]-4-methylphenolate:Ph-bimp)を用いて,世界ではじめて室温でも可逆的酸素化能を,有し,ヘムエリスリンと同様の酸素親和性を持つ二核鉄酸素錯体の合成に成功した。2.さらに酸素化型([Fe_2(Ph-bimp)(OBz)(O_2)]^<2+>)および脱酸素化型錯体([Fe_2(Ph-bimp)(OBz)(H_2O)]^<2+>)の両者の結晶構造を明かにし,高い酸素親和性および不可逆的酸化に対する安定性は主に配位子の立体効果によるものであることを明かにした。3.また,配位子の立体効果により酸素親和性を数万倍の範囲で制御可能であることを見い出した。
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