研究概要 |
本研究では、脱窒菌から単離される銅型亜硝酸還元酵素(亜硝酸イオンの一酸化窒素への還元を触媒する)の構造と機能の研究に焦点を絞り、重点的に研究を行なうことを目的とした。そして、初年度(7年度)は次の基礎的な成果を得ることが出来た。 1)Achromobacter cycloclastes,Alcaligenes sp., Achromobacter xylosoxidans GIFU1051の亜硝酸還元酵素を単離し、化学的処理(フェロシアン化カリでタイプ2銅を還元し、嫌気下でキレート剤であるエチレンジアミン四酢酸とジメチルグリオキシムで除去)によりタイプ2銅のみを選択的に除去した酵素(T2D-酵素)を調製する方法を確立した。2)T2D-酵素の吸収、CD、EPRスペクトルを測定し、holo-酵素(native)のものと詳細に比較検討を行ない、可視領域におけるタイプ2銅の寄与は極めて小さいことが分かった。3)本研究により亜硝酸還元酵素の酵素活性測定法を確立できたため、T2D-酵素にも応用して低活性であるけれども正確に見積もることができた。4)3)の実験と共に、T2D-酵素の基質存在下のパルスラジオリシスにより、この酵素の活性を確認した。また、3種類のholo-酵素のパルス実験から、それらの酵素内電子移動速度定数(1,400-1,900s^<-1>)、2つのタイプ銅の酸化還元電位(240-280mV)の物理定数を得ることができた。さらに、基質である亜硝酸イオンの存在下では、全ての酵素においてタンパク質内電子移動速度が遅くなる(150-600s^<-1>)という知見が得られた。これは、亜硝酸イオンがタイプ2銅に配位し、その酸化還元電位を変えるために分子内電子移動速度が変化するものと考えられた。
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