研究課題/領域番号 |
07454180
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研究機関 | 理化学研究所 |
研究代表者 |
安部 文敏 理化学研究所, 核化学研究室, 主任研究員 (50087491)
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研究分担者 |
片田 元己 東京都立大学, 理学部, 教授 (20094261)
小林 義男 理化学研究所, 核化学研究室, 研究員 (30221245)
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キーワード | インビーム・メスバウアー分光法 / 重イオン加速器 / クーロン励起 / 反跳エネルギー / グラファイト / HOPG / 構造異方性 / 動的振る舞い |
研究概要 |
クーロン励起や(d,p)反応、入射核破砕反応などで生成する短寿命核ビームを用いるインビーム・メスバウアー分光装置を設計・製作し、理研加速器施設のビームラインに設置した。この分光装置は十分に満足できる超高真空を作ることができ、さらに真空制御や温度設定等の遠隔操作も可能なものである。一方、測定系においては放射線の高バックグラウンド下で十分高いS/N比を実現できるという最も重要な役割を担う共鳴γ線検出器(パラレルプレート・アバランチカウンタ)を作製することに成功した。 多結晶グラファイトとc面の配向性が高いHOPGを測定試料としてクーロン励起によるメスバウアー分光実験を行なった。^<40>Arパルスビーム(E=100MeV)を^<57>Feターゲットに照射し、^<57>Feのメスバウアー励起状態を生成させると同時に反跳エネルギーにより飛び出す励起状態の^<57>Feを試料中に注入した。HOPG試料は一片が12×24×厚1mmのものを2つ使用した。c軸が重イオンビームに対して±10°に傾いたホルダーに密着させ、これを液体ヘリウムクライオスタットに固定し、13、100、200Kで測定した。 多結晶グラファイト試料では、3つの共鳴線から成る^<57>Feメスバウアースペクトルを得ることができた。一方HOPGを用いた測定では、13Kにおいて速度-1mm/s付近の主成分とおよそ±5および-6mm/s付近に多結晶グラファイトでは観測されなかったサテライトピークが観測され、面積比で約70%を占める主成分も多結晶試料で得られたものとは異なるピーク位置及び面積強度を示した。100Kではサテライトピークは消失した。以上のことから、多結晶グラファイトまたはHOPGに打ち込まれた鉄原子は異なる存在状態および動的振る舞いを示し、平面構造による高い異方性がこれらに大きく影響を及ぼしていることが実験で明らかとなった。
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