研究概要 |
(a)ケイ素クラスターの構造と成長機構 ケイ素クラスター(Si_n)のサイズがn=10-20の最安定構造とエネルギーを理論計算により決定した。成長機構の一般的な規則性を見いだすために、nがひとつずつ大きくなっていくと、どのような幾何構造のクラスターが最安定に成長していくかを最重点に研究を行っている。現在のところ、5員環と6員環に加えて4員環を含む球状の擬似フラーレン型構造に成長していくことを見いだしつつある。 (b)遷移金属原子を内包する炭素クラスターの構造と反応性 遷移金属原子を一個内包するフラーレン(ScC_<82>,YC_<82>,LaC_<82>,CeC_<82>)は、電子を失いカチオンになっても、電子を受け取りアニオンになっても、金属上の電荷は変化せず、電子の授受はフラーレン上で起こり、金属は正電荷核としての役割を果たし、一種のスーパーアトムとして特徴づけられることを見いだした。この金属ド-ピングの特性を利用して、新規な誘導体の合成を実験家と共同ではじめて成功した。また、最近単離成功された金属を二個内包するLa_2C_<80>とSc_2C_<84>の構造、電子状態、反応性を解明した。C_<80>では7種類の、C_<84>では24種類もの異性体があるが、La_2C_<80>ではIh対称の構造をもつC_<80>異性体に、Sc_2C_<84>ではD_<2d>対称のC_<84>異性体に、二個の金属が等価に内包されることを理論計算から予測した。このSc_2C_<84>構造の理論予測は、^<13>CNMRと^<45>ScNMRの両実験からもごく最近確認された。これは、金属内包フラーレン研究における最初の構造決定の例であり、今後の成長機構解明に重要な意味をもつ。
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