本年度は圧電体素子の基本特性、および音響電気効果が金属触媒の活性増加と反応選択性に与える効果を調べた。圧電体として、円板状のチタン酸ジルコン酸鉛(PbTi_xZr_<1-x>O_3)焼結体および長方形型に切りだしたニオブ酸リチウム(LiNbO_3)単結晶を用い、その表裏にAl電極を蒸着により取りつけ圧電体素子とした。ネットワークアナライザーを用いて、各圧電体の周波数特性を測定し、それぞれ84および66kHzの第1共振周波数を持つことを示した。圧電体素子の両面に、触媒活性なPdおよびAg金属を現有の蒸着装置により50nmおよび100nmの薄膜で蒸着し触媒とし、高周波入力用電極をもつ反応セルを閉鎖循環反応装置に組み込み、ファンクションゼネレーターによりサイン波を発生させ、高速電力増幅器により増幅し、圧電体触媒素子へ高周波電圧を印加するシステムを作製した。計算結果より、PbTi_xZr_<1-x>O_3では径方向、またLiNbO_3では長さ方向の振動モードをもつことが示された。PbTi_xZr_<1-x>O_3に50nmの膜厚のPdを接合した触媒において、C_2H_5OH酸化反応に対し、共振周波数84kHzを印加した場合にCH_3CHO生成活性は460倍も増加した。この著しい増加は共振周波数のみで生じた。Pd/LiNbO_3触媒においても共振周波数の印加により600倍の活性増加が生じることを見いだした。音響電気効果が触媒活性に与える効果を調べるために、反応の選択性に与える効果をAg触媒上のエタノール脱水素および脱水反応について調べ、音響電気効果により脱水反応がより促進されることを明らかにした。
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