固体触媒に外部から信号を送り、その触媒作用をコントロールすることを可能とする固体触媒を開発することを目的として、対称中心を持たない強誘電体に著しい格子変位を発生できる共振効果を応用した。強誘電体結晶として、表面に垂直な自発分極軸を持ち結晶の表裏に(+)および(-)分極面を露出したz-カットLiNbO3単結晶(以下z-LiNbO3と略す)を用いた。共振状態での機械的および電気的特性を明らかとするため、強誘電体の共振特性、格子変位量および表面電位を測定した。第1基本共振周波数として3.4MHzが得られ、圧電方程式に基づいて解析し、共振周波数の測定値と理論値の良い一致を示すこと、また、格子変位量測定と共振周波数の理論計算からz-LiNbO3は厚さ方向の振動モードを持つことを明らかにした。さらに、表面電位測定から共振状態ではフォノンドラッグ効果によって(+)分極面では負電位、(-)分極面では正電位の分極場が形成されていることを示した。z-LiNbO3強誘電体に触媒を接合し、触媒の機能に及ぼす共振効果を調べるために、共振効果によるエタノール酸化反応に対するPd、AgおよびNi触媒表面上のアセトアルデヒド生成活性増加を検討した。エタノール酸化反応では用いた触媒の中で、Pdが最も高い活性を示し、3Wの印加による共振効果において、343Kの反応温度で触媒活性が1900倍増加し、活性化エネルギーも非共振の156kJmol^<-1>から共振では12KJmol^<-1>に92%低下することを見出した。これに対し、AgおよびNi触媒では、共振効果による活性増加は小さく、共振効果は金属触媒の種類によって異なることが示された。本研究において、強誘電体単結晶に発生できる共振現象は固体触媒の人工制御に対し極めて有効であり、高度な機能を持つ触媒への展開が期待できることを結論した。
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