研究概要 |
希土類遷移金属カルコゲナイドとしてまずイッテルビウム(Yb)とイオウ(S)の二元系を選び、化学輸送法を用いて結晶の作成を行った。Ybは価数として通常3価、または2価をとるので、この系ではYb_2S_3,YbSができることが期待され、実際にこれらの単結晶が得られた。これらはS^2を考慮すると絶縁体(または半導体)であり、電気良伝導性は期待されない。そこでYbが2価、3価の中間をとる化合物の合成を試みた。様々な組成比で仕込み化学輸送法を試みた結果、Yb_3S_4の単結晶の合成に成功した。この物質中ではYbは単純には2.27価となり混合原子価状態となると思われるが、実際にはこの結晶は半導体でサイトで2価、3価とヘテロに分離した混合原子価状態となっていると考えられる。この系で電気伝導性を上昇させるためには、ホモジニアスな価数揺動状態を実現することが重要であり、そのための具体的な方法として、価数の異なる不純物を導入すること、イオウをセレン(Se)と置換していくことなどが考えられ現在検討中である。 また、装置としては導入したワイドバンドパワーアンプとNMR用のデジタルメモリとを用いて既存のNMR装置をハイパワーな緩和時間の測定可能な装置へと改良を行った。この装置を用いて、(1)希土類Prを含む銅カルコゲナイドの銅の反強磁性NMR信号の観測、(2)希土類Ybの金属間化合物YbCu_<4-x>Ag_xでの銅の核四重極共鳴の観測を行った。(1)については、反強磁性NMRスペクトルを詳細に解析・検討することにより、Prの4f、銅の3dとカルコゲンの2pとの間に混成(ミキシング)が起こっていることを明らかした。(2)については、高濃度近藤効果が全系で起こり、低温はフェルミ液体状体となっていること、銀組成に従って、系統的に高濃度近藤効果の特性温度(近藤温度)が変化していることを見いだした。この装置を用いて研究を継続し、希土類遷移金属カルコゲナイドの混合原子価状態と伝導性の関係を検討していく予定である。
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