研究課題/領域番号 |
07454186
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
研究分野 |
機能・物性・材料
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
吉村 一良 京都大学, 大学院・理学研究科, 助教授 (70191640)
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研究分担者 |
加藤 将樹 京都大学, 大学院・理学研究科, 助手 (90271006)
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研究期間 (年度) |
1995 – 1996
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キーワード | 希土類カルコデナイド / 混合原子価状態 / 高濃度近藤効果 / 強相関 / 核磁気共鳴遷移金属化合物 / 遷移金属化合物 / 遍歴電子磁性 |
研究概要 |
遷移金属化合物では金属的電気伝導性を示すものにおいては混合原子価状態が実現されていることが知られている。希土類Prを含む銅カルコゲナイドの系で、金属伝導を示すべき混合原子価状態の組成で半導体になってしまう現象を調べるため、ク-ロメトリー法による価数測定やX線リ-トベルト解析によるボンド長から求められるバレンスボンド測定、銅の反強磁性NMR、核四重極共鳴測定を行った結果、Prの4f、銅の3dとカルコゲンの2Pとの間に混成(ミキシング)が起こり、一種のフェルミ面効果(近藤効果)によって導入されたホールが局在化していることが明らかになってきた。また、希土類YbとCuを基本とする化合物系を調べた結果、Ybの金属間化合物YbCu_<5-x>Ag_xでは全系にわたって高濃度近藤効果が観測され、その特性温度が系統的に変化することが明らかとなったが、同一構造のYbCu_<5-x>In_xでは高濃度近藤系から価数転移を伴う価数揺動系へのクロスオーバーが起こり、中間組成では近藤絶縁体的振る舞いが現れることが見出された。また、磁気的なフラストレーションによる現象が強相関電子系のパイロクロア型化合物R_2V_2O_7、R_2Ru_2O_7(Rは希土類)において観測された。 装置としては導入したワイドバンドパワーアンプとNMR用のデジタルメモリとを用いて既存のNMR装置をハイパワーな緩和時間の測定可能な装置へと改良を行ったが、この装置に高い均一度を有した8テスラの超電導磁石を導入し、高分解能核磁気共鳴測定の可能な装置へと更に改良を行った。この装置を用いて、Ru系酸化物において^<17>Oをエンリッチすることによって酸素のNMRを行い、核磁気緩和の測定からRuの磁気モーメントの振る舞いを動的に調べた。その結果、インバー効果を示すSrRuO_3に関しては、平均場近似に基づく局在モーメントモデルでも、弱い遍歴電子強磁性に対するスピンの揺らぎ理論でも、その動的振る舞いを説明することができず、系が電子相関の強い中間領域的な金属状態となっていることが明らかになってきた。また、従来、反強磁性的な磁気相関が強いとされてきたCaRuO_3では、その動的振る舞いから、実は強磁性的な磁気相関が強く強磁性に非常に近いパウリ常磁性状態にあることが明らかになった。比熱測定の結果も核磁気緩和測定で得られたスピン揺らぎのパラメータで再現されることが明らかになり、上の結論の妥当性を示している。今後、この装置を用いてYbカルコゲナイドのミクロな動的研究を進めて行く予定である。
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