β-Si_3N_4のシリコンをすべて窒素で置き換えた仮想物質は、理論的な体積弾性率の計算からダイヤモンドをしのぐ硬さを持つと予測されており、薄膜法、高圧合成法の両面からの合成が試みられている。本研究は、各種の含窒素炭化水素原料をパラジウムカプセルに封入して立方体アンビル型高圧発生装置で高温高圧処理し、パラジウム壁を通した脱水素をうながしてβ-C_3N_4を合成することを目的としている。得られた試料は差動熱伝導法による組成分析、粉末X線回折と電子線回折および高分解能電子顕微鏡観察による構造解析を行う。本年度の成果は以下の通りである。 (1)出発物質としてCとNのみからなるテトラシアノエチレン((NC)_2C:C(CN)_2、C_6N_4)を用い、足りない窒素を補うために、窒素発生剤として窒化銅(Cu_3N)を同封し、6GPa、1300℃で処理したところ、カプセルと窒化鉄の界面に立方晶(a=2.73A、c=3.16A)で指数づけできる新物質を得た。これはおそらくパラジウム-鉄を含む新しい窒化物であると考えられ、現在構造解析を急いでいる。 (2)出発原料として窒素過剰のテトラゾール(CH_2N_4)を用い、6GPaで高圧処理をした。400℃以上の高温では得られた試料はほぼグラファイト単相であったが、300℃で熱処理したものには未知相の生成がみとめられた。元素分析の結果、試料中に窒素の残留が確認され、現在構造解析中である。
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