平成7年度は、シミュレーションプログラムによるイオンビーム制御システムの設計、特に、円筒光学系によるイオンの収束、選別、減速、固定を行う電場制御システムの設計を念入りに行い、図面起こし、制作を行った。円筒光学系によるイオンの収束、選別、減速、固定を行う電場制御システムの設計に、かなりの時間を費やした。これは、夏過ぎて、さらに高度なシミュレーションソフトウエアが入手できたため、システムをうまくシミュレートできるようになったためである。その結果、これまで採用していた、各種装置パラメーターを変更した方がよいとの結果がでてきた。最近は、実験によってパラメーターを決める前に理論計算で決定する手法が発展し、イオン光学実験システムのより精度の高い設計が可能になった。一方、低温イオンビームの発生は速度の揃った同一サイズイオンを十分な量発生させるにはかなりの障害が見られ、結局、パルス法から高電圧コロナ放電法に切り替えた。コロナ放電には高出力高電圧電源が必要であるが、他研究室からの貸与で試運転を行っている。分子イオンビーム装置から分離導入された特定イオンを、結合エネルギーより小さな運動エネルギーのものだけに分離選択し、液体ヘリウム温度の制動電極の上にマトリックスとともにソフトランデイングさせるという制御蒸着を行うための条件をシミュレーションによって見出した。この蒸着試料をビーム源から切り離してフーリエ変換分光計に結合させて振動及び電子スペクトルの測定を行うための蒸着室の脱着、移動、測定システムとの結合を真空度を下げずに行う移動装置を更に設計中である。3年計画でこの新しい分野を開く計画であるが、2年度中にある程度の成果が得られると期待される。
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