光合成の初期過程では、太陽エネルギーを効率的に集光し、その光エネルギーによって、電荷分離を行っている。この過程はアンテナ部と反応中心部で各々行われているので、これらのことを模倣して固体表面上に展開することで、光応答性電荷分離膜を作成することを行った。 1.光合成アンテナ部として、その構造が比較的簡単な緑色細菌の膜外アンテナ部であるクロロゾームを、モデル化合物であるクロリン亜鉛錯体の自己集合体によって人工的に調製した。 2.このクロリンの自己集合体からバクテリオクロリンへのエネルギー移動が効率的に生じることが判明し、アンテナ部の機能モデルとして優れていることを解明した。 3.環状テトラピロール類(ポルフィリン、クロリン、バクテリオクロリン)を合成し、炭素電極上に修飾し、その電気化学的挙動を検討した。電子授受を行う化合物共存下でテトラピロール類を選択的に光照射すると、電極上でテトラピロール類と電子授受化合物との分子間電子移動が生じ、光電流が生じることが判明した。 4.テトラピロールを炭素電極上に修飾するという簡便な方法で、効率的な光電池(光応答性電荷分離膜)を作成することに成功した。 5.さらに、2で述べた人工アンテナ部と3で述べた人工反応中心部を複合化することで、人工光合成を調製できることが判明した。すなわち、亜鉛クロリン錯体の自己集合体で吸収した光エネルギーが、バクテリオクロリンに伝達され、メチルビオローゲンから光励起されたバクテリオクロリンへの電子移動が生じ、カソード光電流として外部に電気エネルギーとして取り出すことが可能となった。
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