研究概要 |
有機スズ(IV)化合物のスペシエーションに関して、平衡、構造、反応性の視点から以下のような研究成果を得た。 1.水溶液中における有機スズ(IV)の加水分解および錯形成反応 (1)電位差滴定法を用いてジメチルスズ(IV)、トリメチルスズ(IV)、トリエチルスズ(IV)イオンの加水分解平衡の平衡定数を決定した。ヒドロキソ架橋の多量体が生成する。その構造と多量体生成の関係を明らかにした。 (2)ジメチルスズ(IV)およびトリメチルスズ(IV)イオンとアミノポリカルボン酸(NTA,EDDA,MIDA,PDA)との錯形成反応に関する平衡定数を決定した。配位子の電子供与性との関係を明らかにし、キレート形成の有無を構造の観点から検証した。 2.有機スズ(IV)化合物の構造の決定 (1)ジメチルスズ(IV)と4つのアミノポリカルボン酸との錯体の単結晶を得ることに成功し、その結晶構造を決定した。スズ原子は2配位、3配位、4配位、5配位、6配位、7配位と多様な配位数を取り、それは配位子とのσ結合性と密接な関係にあることを明らかにした。 (2)2、3の溶存するスズ(IV)化合物のEXAFSスペクトルを測定することによって、スズ原子周りの構造を決定した。 3.レーザー光分解による有機スズ(IV)化合物の分解反応 メチルスズ(IV)とテトラフェニルスズ(IV)のYAGレーザー照射による光分解反応を研究した。分解生成したトリフェニルスズ(IV)ラジカルの水との動的挙動を明らかにした。
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