研究概要 |
水溶液におけるイオン会合反応を,ソルバトクロミズムを示す新規合成のイオン会合試薬を用いて,平衡論的な面から吸光光度法とキャピラリー電気泳動法により研究した。更に新規合成の試薬を用いて、水溶液内イオン会合反応に基づく分析化学的応用に関する研究を行った。主要な研究成果は次の4点に集約される。 1.イオン会合試薬の合成:陽イオン性試薬として、R_3N^1-がメチレン鎖で結ばれた二価試薬を合成した。更に、短波長シフト試薬として,アゾ系陽イオン染料を合成することができた。 2.イオン会合の平衡論的研究:対イオン共存下でイオン会合により引き起こされるイオン移動度の減少を利用するイオン会合反応の平衡論的解析法を確立し、一価,二価有機陰イオンと疎水性陽イオンとのイオン会合定数を求めた。イオン会合によりソルバトクロミズム7現象を示すアゾ系陰イオンを用いて吸光光度法によりイオン会合反応を解析することにも成功した。後者を光度滴定に用いて、長鎖アルキル基を持つ陽イオン、陰イオン間のイオン会合定数の決定にも初めて成功した。これらの平衡定数から、イオン会合に寄与する因子としてイオンのかさ高さ(疎水性),イオン間距離の重要性が見いだされた。また、イオン会合の温度依存性を解析することにより、エンタルピーとエントロピーの直線的相関を見いだし、イオン会合に伴う水の出入りが重要であることを見いだした。水溶液における疎水性相互作用の寄与分を見積もり,既に求めている二相間分配平衡の結果と比較し、イオン会合体の分配が重要であることを初めて実証した。 3.イオン会合反応の速度論的研究:比較的長いアルキル鎖を持つイオンでは,水溶液において反応速度が極端に遅くなるものがあることを見いだした。合成したアゾ系陰イオンとアルブミンとのイオン会合反応について検討し、生命現象等との関連では速度論的情報が大変重要であることを見いだした。 4.分析化学的応用に関する研究:本研究で合成・開発した試薬を用いて,水溶液でのイオン性物質の吸光光度法,蛍光光度法を確立した。また,フローインジェクション法への適用,HPLCポストカラム検出法,滴定終点検出指示薬への適用、キャピラリー電気泳動分離への適用が検討され、実際試料に応用された。
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