研究概要 |
(1)昨年度に研究した霊長類のABO式血液型遺伝子とその相同な配列の進化に関する分析がMolecular Biology and Evolutionに刊行予定である(Saitou and Yamamoto,1997)。また,ヒトのABO式血液型遺伝子の塩基配列について系統ネットワーク法を用いて解析を行なったふたつの論文をHuman GeneticsとBloodに発表した(ともにOgasawara et al.1996)。 (2)昨年度にチンパンジーのO型個体のDNAを米国の共同研究者から譲り受けて解析したが,今年度さらに同一の共同研究者から,AB型とO型判定されたチンパンジーDNAの供与を受けた。PCR法でABO式遺伝子領域の一部分を増幅し,direct sequencingを行なったところ,いくつかの個体でヘテロ接合体と思われる配列パターンが観察された。そこで,SSCP法及び多型サイト特異的PCRプライマーを用いて,ヘテロ接合体の片方のみを増幅して対立遺伝子ごとの配列決定を一個体で行なった。これらの結果,血清学的にはB型と判定されたにもかかわらずヒトやゴリラのB型に特徴的な塩基パターンは観察できなかった。今後は,血清型判定ミスの可能性を含めて,より詳細にデータを検討する予定である。
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