温血脊椎動物のゲノムDNAはGC含量のMbレベルでの区分的構造よりなり、その区分構造が染色体バンド領域と関係することを明らかにしてきた。染色体バンドならびにGC含量巨大モザイク構造の機能上の意味と、それらが形成された進化機構を知る目的で、バンド境界と考えられるGC含量巨大モザイク境界の構造解析を行なった。GC含量が大きく変化する部位の例をヒトMHC領域のクラスIIとクラスIIIの境界部位に同定し、その部位に大規模AluクラスターとLINE-1クラスター並びにpseudoautosomal boundary(PAB)と相同性の高いPABL配列を見い出した。PABはXY染色体のPARと性特異的配列との境界であり、X不活化や高頻度の相同組換えの境界点と想定されている。PABLがヒト染色体上並びにウシ染色体上に多数存在することも見いだした。MHC領域のPABLをプローブにして、既に約200個の独立なヒトPABLを持つクローンを得ている。そのうち20個のPABLの塩基配列を決定し、5'と3'の両端とも正確に保存されていることが判明した。PABL配列から転写が起きていることが、cDNAのクローン化により明らかになり、650塩基のPABL配列を骨格として、大型のRNA分子として存在することが判明した。RNA配列においても、5'と3'の両端とも正確に保存されており、機能を持つ分子として進化の過程で保持されてきたことが示唆される。GC含量変移点近傍の複製タイミングも詳細に決定できた。これらの結果は、Huma Mol.Genet.(1996)に発表した。PABLやLINE-1ならびにAluの高密度クラスターが、GC含量の巨大区分構造およびバンド領域の境界の一般的性質であるのかを検証しようと試みている。
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