沖縄島中城湾の佐敷町の干潟には砂州によって囲まれた閉鎖的で干潮時に泥質干潟が出現する水域があり、トカゲハゼが多数生息していることで知られている。またヒメヤマトオサガニの固体数も多い。本年度はこの両種の種間関係と環境との関わり、二枚貝や埋在生ベントスの摂食活動による環境や生物群集に対する影響について評価した。 ヒメヤマトオサガニの定着はトカゲハゼの存在により影響を受ることが判明したが、逆のパターンは確認できなかった。トカゲハゼは本来の泥質干潟以外の環境でも造巣活動が可能であることがわかったが、より砂分が多い環境で個体数が減少する原因の究明が急がれる。 ヒバリガイ類は足糸が付着可能な基質が存在すれば干潟、砂質の海底でも普通に観察される。また埋在生の懸濁物食者も多い。懸濁物食者が水塊から有機物を濾過摂食する活動は環境浄化機能の重要な側面である。本年度はヒバリガイ類を用いてその機能の定量化を試みた。水中に存在する有機物量と摂食後排泄される糞中に含まれる有機物量の差が浄化された量として計算される。ホシスジヒバリガイが25.1/m^2の密度で17.4haの範囲に分布している海域の場合、水が清澄な場合、一日あたり430gの窒素と3500gの炭素が除去されると計算された。波浪の影響で水が攪乱され、懸濁物食量が多い状態の測定も必要である。 ニホンスナモグリは埋在性の動物で地中から糞を干潟表面に噴出している。このため噴出口周辺は底質が不安定な状態になっており、移動能力を有する堆積物食者が優占していた。一方、噴出口から離れるにつれて他の生物の生息も可能になり、種の多様性が増加すると予想された。ただし、小型動物が大部分であるため同定作業に時間を要する。
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