本年度は特に堆積物食者の活動の評価に関する調査研究と、砂浜を含む堆積海岸の懸濁物浄化機能の評価を中心に研究した。 シオマネキ類は沖縄の干潟における最も重要な堆積物食者のグループの一つである。ヒメシオマネキを材料として、その個体群密度、日周活動や諸環境条件を考慮して干潟から摂取する有機物の量を推算すると、2-8gN/m^2と計算され、仮に1haの範囲にヒメシオマネキが生息しているとすると年間20-80kgの窒素が摂取されることになる。干潟に堆積物者が存在しなければこれらの有機物は干潟上にに蓄積され、より還元的な環境が創出されるであろう。堆積物食者の摂食活動の役割を定量的に評価する方法が確立されたので今後、さまざまな種に応用し、干潟全体の機能を評価する必要がある。 一方、干潟を含む砂浜海岸では干満に伴って海水が干潟や砂浜内部に入り込み濾過される。この濾過量を測定した結果、砂浜と干潟が1kmにわたって続いていた場合、年間約70トンの海水が濾過されると推定された。有機物量の指標であるCODは明らかに干潮時に減少して戻ってくるのでその浄化量は無視できない。今後、海水中に含まれる懸濁物質量や干潟に負荷される陸上からの有機物量の動態と関連させて、干潟の機能をさらに詳細に検討する必要がある。
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