研究概要 |
細胞は、増殖に適さない環境条件にしばしば遭遇する。栄養飢餓の応答は、従来細胞増殖の停止、静止期への移行など形態的な指標により解析され、生化学的な解析はほとんど進んでいない。様々な栄養飢餓に応答して誘導される自食作用は静止期移行のよい指標となると同時に、バルクの蛋白分解の生理的な意義の解明も重要な課題である。 自食作用の誘導に必須な遺伝子群(APG)の単離と構造解析を進めた。最初にクローニング、塩基配列が決定されたAPG1は新規のタンパクキナーゼをコードしているが、その基質と制御系は明らかになっていない。APG1の過剰発現によって他のapg変異が抑圧される可能性について検討した結果、apg13が部分的ではあるが抑圧される事が明らかとなった。APG13遺伝子産物は、親水性の新規のタンパク質であり、興味深いことに、リン酸化によって翻訳後修飾を受け、栄養飢餓によって速やかにリン酸化状態が変化する。この研究期間でAPG5,6,8,9,13,14,15遺伝子が新たに同定され、これらの遺伝子の産物の同定、局在性、発現調節の解析から、栄養飢餓に応答するシグナル伝達系の解明が期待される。また我々が独自に開発したアルカリ性ホスファターゼを用いた自食作用の解析系を用いて静止期移行に先立って自食作用が誘導されることを示すことに成功した。
|