研究概要 |
親植物のNicotiana GlaucaあるいはN.langsdorffiiの組織切片をホルモンフリーの培地で培養すると切断面はいくらか分裂した後、褐変し癒傷組織を形成する。分裂を継続するためには培地に植物ホルモンの添加が必要である。それに対して遺伝的腫瘍を形成するFl雑種植物(N.glauca x N.Langsdorffii)の切片は植物ホルモンフリーの培地で腫瘍組織を形成せず、細胞分裂が継続して直線形成に至る。申請者は今までの研究成果から、遺伝的腫瘍の形成過程では正常な植物で見られる傷に対する防御機構を抑制する機構が働いており、そこには何らかの形で植物ホルモンが関与しているという作業仮説をたて、傷によって誘導される遺伝的腫瘍形成の分子機構を解析することを目的としている。 本年度は正常形態のFl植物では発現しているが、Fl植物の切断処理による腫瘍誘導過程で発現が抑制される遺伝子のcDNAのクローニングを試み、今までに3クローン(クローン9,24,515)を得た。得られたcDNA各クローンについて、T3,T7プライマーを用い両端の200bpの部分塩基配列を決定しホモロジー検索を行ったが、特に高いホモロジーを示すものは認められなかった。得られたクローンについて、ノーザンブロッティングによる発現場所と腫瘍誘導処理後の遺伝子発現の時間経過の解析を行なった。Fl植物体での発現場所に関しては、クローン9は茎と葉で、24と515は茎で強く発現している。茎の切断処理を行なうと、クローン9と24は誘導初期に一過的に発現が低下するが、腫瘍組織が奇形腫の芽原基が形成されるにつれ発現量が増加する。クローン515は腫瘍誘導過程で発現量が低下し、腫瘍状態を反映して低い発現を保つというものであった。
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