研究概要 |
葉緑体の形成には核ゲノムと葉緑体ゲノムが協調的に発現する。遺伝学的、生理学的研究から葉緑体が核ゲノムの一部の遺伝子の発現に関与することが示されている。しかし、葉緑体から核へのシグナルの分子的実体については全く不明である。本研究は、葉緑体から核への葉緑体シグナルの分子的実体を明らかにし、植物オルガネラ間のクロス・ト-クの分子的な理解を目的とする。 1.葉緑体機能依存の核遺伝子の同定 当研究室で単離したタバコ葉緑体成分をコードするcDNA14種について、葉緑体依存的発現を調査したところ、いずれも依存的であったが、顕著な差を示すものは無かった。そこで、タバコ幼植物を寒天培地上に生育させ、スペクチノマイシンとストレプトマイシン処理して葉緑体ゲノムの発現を阻害し、発現量が低下する核遺伝子(cDNA)をディファレンシャル・ディスプレーにより100種程単離し、部分塩基配列を決定して、psaDa,psaDb,psaF,rbcS,cabなどのcDNAを同定した。さらに、機能未定のものが多く得られたが、そのうちの特徴的なクーン11-1のゲノミックDNA配列を決定し、特異な遺伝子構造を見出した。 2.葉緑体シグナルの探索 上記で得られたタバコrbcSの鋳型として、タバコBY-2株由来のin vitro転写系で調べ、低い転写活性を得た。これにタバコ幼葉の核抽出液を加えると転写活性が上昇した。従って、この画分中に緑葉でrbcS転写を行わせる因子があると考えられる。
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