遺伝子改変植物を用いた細胞壁構築過程の解析

1995 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 07454220
• 研究種目: 一般研究(B)
• 研究機関: 鹿児島大学
• 研究代表者: 西谷 和彦 鹿児島大学, 教養部, 助教授 (60164555)
• 研究分担者: 岡本 繁久 鹿児島大学, 教養部, 講師 (30211808)
• キーワード: エンド型キシログルカン転移酵素 / タバコ培養細胞BY-2 / 形質転換細胞 / キシログルカン / 細胞壁 / 遺伝子発現 / 植物ホルモン / 多糖

研究概要

植物細胞壁は形態形成や細胞間情報伝達などの様々な役割を担う、植物独自の細胞構造であることから、その分子構造や構築過程は植物の諸機能を理解する上で最も基本的な基礎知見の一つである。植物細胞壁がセルロース微繊維とキシログルカン架橋を主要成分とするネットワーク状の超分子構造から成ることは、すでに明らかにされてはいたが、その構築機構や、構造と生理機能との関連については未だ不明のままであった。本研究では、申請者が1992年に発見したキシログルカン架橋のつなぎ替え反応を触媒する酵素、エンド型キシログルカン転移酵素遺伝子の働きに焦点を当て、タバコ培養細胞BY-2をモデル細胞系に用いて、細胞壁構築における同遺伝子の働きの解析を進め以下の結果を得た。1)タバコ培養細胞では増殖期初期にEXGT-mRNA、EXGT-蛋白質の高い発現がみられ、蛋白質は細胞壁中に分泌されることが確認された。2)シロイヌナズナより単離したEXGT-A1遺伝子の翻訳開始点よりのDNA断片にGUS遺伝子繋いだ融合遺伝子を培養細胞に導入し、GUS発現を指標にしてEXGT-A1遺伝子のプロモーター活性を解析し、EXGT-A1がタバコ培養細胞内でプロモーター機能を持つ領域を特定した。3)EXGT-A1プロモーターにセンス、およびアンチセンスEXGT-cDNAを繋いだ融合遺伝子をタバコ培養細胞BY-2に導入し、安定な形質転換細胞を単離した。
本年度の研究によって、EXGT改変遺伝子を導入した形質転換タバコ培養細胞と調製する方法が確立することができた。この方法を用いて、目下、細胞壁構築過程におけるEXGT遺伝子の機能を解析を進めている段階である。

研究成果

• [文献書誌] Nishitani,K.: "Endo-xyloglucan transferase,a new class of transferase involved in cell wall construction." J.Plant Research. 108. 137-148 (1995)
• [文献書誌] Nishitani,K.: "Gene expression of endoxyloglucan transferases with are involved in cell wall construction in plants." Proceeding of the Morphogenesis and Metabolism in Opportunistic Fungal Pathogens.112-121 (1995)
• [文献書誌] Hoson,T.et al.: "Effects of hypergravity on growth and cell wall properties of cress hypocotyls." J.Expt.Bot.(in press). (1996)
• [文献書誌] 西谷和彦: "植物細胞壁はどのようにしてつくられるか" 化学と生物. 33. 278-280 (1995)
• [文献書誌] 冨田英津子 他: "エンド型キシログルカン転移酵素の反応機構と遺伝子発現" 応用糖質学会誌. 42. 169-175 (1995)
• [文献書誌] 西谷和彦: "細胞壁の構築と植物の成長" 細胞工学別冊 植物の分子細胞生物学. 50-61 (1995)