研究概要 |
1.ニンジン培養細胞の不定胚分化の初期過程に特異的に発現する遺伝子の単離とその解析。 Substractive differential screeningにより、不定胚初期過程に特異的に発現するCEM6をcloningした。このcDNAの塩基配列解析の結果、glycine-richな疎水性のタンパクをコードしていることが分かった。次にNorthern解析によって、CEM6のmRNAは球状胚を中心に、もっとも強く発現し魚雷型胚以降は、その発現が低下し消失することが明らかとなった。しかし、in situ hybrizationによってCEM6の空間的発現を調べたところ、CEM6は球状胚、魚雷型胚の表皮細胞のみに発現しており、しかも魚雷型胚で非常に顕著にmRNAの蓄積がみられた。しかも魚雷型胚を1日2.4-Dで処理することによってCEM6の発現は完全に消失した。 2.ニンジン培養単細胞からの不定胚分化誘導系の確立。 ニンジンの芽ばえの胚軸から懸濁細胞を誘導し、これから不定胚、幼植物体を再生した。この再生幼植物体胚軸を24時間2,4-Dで処理後、2,4-Dを含まない培地で培養すると、単細胞が遊離してくる。この単細胞を集めてconditioned培地(-2,4-D)で培養すると不定胚が高頻度で誘導された。これはミリセル上でも誘導でき、連続観察に適した系が確立された。 3.アンチセンスCEM6の導入によるCEM6の機能の解析 アンチセンスCEM6を構築し、単細胞にこれを導入して、CEM6の発現を抑制して、CEM6の不定胚分化における機能を明らかにする試みをおこなった。まずpBI221を、パーティクルガンで導入し、最適の導入条件を決定した。この条件でニンジン懸濁培養にアンチセンスCEM6を導入し、transformantを得た。現在これから不定胚を誘導中である。また単細胞への遺伝子導入も検討中である。
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