植物細胞の形態形成について重要な時期であるM/G_1境界期の表層微小管再構築の機構を解明すべく、昨年度までに明らかにされたM/G_1境界期の表層微小管の再構築過程において、(1)各表層微小管の期限を明確にすべくMTOC活性の認められる部位の特定を行った。具体的には、まず各時期のBY-2細胞を低温とプロピザミドで同時処理することにより微小管が完全に破壊されることおよび処理中に細胞周期の進行が完全に停止していることを確認した。次にその細胞を通常の培養にもどしたところ、その後の進行に支障がないことが判明した。この方法を細胞周期の各時期で用いて微小管が形成されてくる部位を特定したところ、G_1期の細胞では細胞表層より、S〜G_2期では細胞表層と核の周囲より微小管の再形成が観察された。M/G_1境界期においては核の周囲のみから微小管の再形成が見られる細胞と核の周囲および細胞表層で再形成が見られるものが観察された。また、49-kDaタンパク質とMTOC部位の相関についても検討した。(2)表層微小管と細胞壁最内層のセルロース微繊維との対応関係、特に、垂直な微小管の形成からその配向に対応するセルロース微繊維の形成について検討すべく、タキソ-ルの前処理によりM/G_1期の微小管の配向を保ったプロトプラストの作成に成功し、現在、これを用いて表層微小管の配向とセルロース微繊維の再形成について検討している。(3)植物細胞のMTOCの機構を解明すべく、EF1α様の49-kDaタンパク質をコードする遺伝子tellの発現と細胞周期との関連を見る目的で、tellの_CDNAをプローブとして細胞周期各期でノーザンブロッティングを行ったところ、顕著な時期特異的発現は見られなかった。また、BY-2のゲノムDNAを制限酵素で切断し、サザンブロッティングを行った結果から、他種のEF1αと同じくtellはBY-2のゲノムに1コピーではなく複数あることが判明した。
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