植物細胞のM/G_1期における表層微小管の再構築機構と形成された表層微小管による細胞の形態形成の機構を解明すべく、昨年度に引き続き以下のアプローチを行った。 (A)今年度は形成された表層微小管が植物細胞の形態形成にどのように関わっていくのかを明らかにすべく、表層微小管(CMT)とセルロース微繊維(CMF)の形成の関係をプロトプラストを用いて検討した。新しく形成されるCMFを観察するために既存のセルロースを除去してプロトプラストにする。この際、酵素処理およびその前培養の過程でタキソ-ルを用いることで単離されたプロトプラストにおいても細胞周期各期のCMTの配向は保持される。さらに、これらのプロトプラストを培養して形成されたCMFとCMTを観察したところ、タキソ-ルを用いないコントロールのプロトプラストではCMTとCMFの配向は無関係であるが、タキソ-ル処理したプロトプラストでは2種の繊維の配向は良く一致していた。現在、細胞周期各期のCMTのCMF形成への寄与について検討している。 (B)植物細胞のMTOCの機構を解明すべくBY-2のタンパク質をホスホセルロースカラムにより部分精製し、その0.5MKCl抽出画分を用いてin vitroのアスター形成系を開発した。今年度はこの実験系におけるアスターの形成機構およびアスター形成を担うEF-1α以外の因子の探索を行った。上述の画分を精製チューブリンとともに加温すると先ず径2μmの粒子を生じ、それらを起点(マイナス端)として約3μm/minの速度で微小管束が放射状に伸長する。当初この粒子に含まれるタンパク質について検討したが、これを出発材料とする精製には技術的に限界があるので他の方法を試みた。ミニプロトプラストから0.2MKCl緩衝液により抽出した画分を硫安沈殿すると、かなり精製された55-70%硫安画分でもアスター形成能を保持していた。これを新たな出発材料として、DEAEセファセル、ホスホセルロースカラムなどを順次用いてMTOC関連タンパク質の精製を進めている。
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