研究概要 |
1.新生及び成熟雄ラットを去勢し、術後30日の下垂体細胞をテストステロン(T)存在下又は非存在下で培養した。そして生殖腺刺激ホルモン放出ホルモン(GnRH)に対する反応性を生殖腺刺激ホルモン(FSH,LH)分泌量から、疑似手術群(対称群)と比較検討した。TはFSH分泌量を有為に高めたが、LH分泌量に影響を与えなかった。しかしTは両ホルモンともGnRHに対する反応性を低下させた。Tのこの効果は異なるエイジの去勢群さらに対照群に関わらず、同じ傾向を示した。以上から、長期去勢後のT欠如による下垂体細胞の明らかな質滴変化(分泌亢進状態を除いて)は得られなかった。また、T存在下によるGnRHの反応性の低下の原因の1つとして、GnRH無反応性の亜集団の出現を考え、単一細胞レベルで検討したが、明らかにする事は出来なかった。 2.冬眠哺乳動物(コウモリ)を用い、年生殖周期における視床下部GnRH産生神経細胞の分泌活性を調べた。GnRH免疫陽性細胞数は春から夏にかけて減少し、秋から冬に増加した。この事実は夏季にGnRH細胞の分泌活性が最も亢進することを示唆する。以上の結果を踏まえて、下垂体細胞からのFSH,LH基礎分泌量とGnRHに対する反応性を単一細胞レベルで解析した。FSHとLH産生細胞数自体は変化しないが、分泌細胞数、個々の細胞からの分泌量さらにGnRHの反応性は季節を通じて大きく変動すること、冬眠期におけるFSH,LH産生細胞の機能は低下するが、GnRH受容体を保持していることが示唆された。 3.コウモリの年生殖周期における下垂体の細胞動態(増殖と細胞死)について検討した。増殖活性を示す細胞の全てがプロラクチン産生細胞であり、雄でも冬眠期を除く全ての季節で、雌で春から夏季に検出された。これは内因性エストロゲン分泌亢進の為と考えられる。一方、細胞死(アポトーシス)は見られなかった。
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