哺乳類の下垂体及び視床下部のホルモン分泌細胞のホルモン分泌活性を細胞レベル及び単一細胞レベルで調べ、以下の成果が得られた。1)ヒト下垂体腫瘍細胞を用い、視床下部ホルモンの分泌活性があることを単一細胞レベル(細胞ブロット法)で検出し、このペプチドが下垂体ホルモンの分泌に対し、自己または傍分泌的に作用する可能性を示唆した。2)1で用いた方法によって、ヒト下垂体腺腫細胞からマトリックスメタロプステアーゼ分泌の検出を試み、ホルモン以外の分泌物質の検出にもこの方法が有用である事を示した。3)好銀性核小体領域が腫瘍細胞においては増殖活性の、ラット下垂体細胞においては細胞からのホルモン分泌活性の指標としてそれぞれ有用である事を示した。4)トランスフォーミング成長因子(TGFβ)にはプロラクチン(PRL)分泌抑制作用が知られている。エストロゲン刺激ラット下垂体細胞はTGFβに対する感受性を低下させた。5)冬眠性哺乳類(コウモリ)を用いて、年生殖周期における脳内ゴナドトロピン放出ホルモン(GnRH)産生神経細胞の分泌活性を調べた。夏季に最も分泌活性が高くなり、冬眠期に最も低下した。さらに、下垂体を単一細胞に解離して調べた所、Gn産生細胞の分泌活性並びにGnRHに対する反応生は夏季に最も高く、冬眠期に最も低下した。この結果はGnRH産生神経細胞の分泌活性の変化と平行していた。6)上述の知見と生殖腺におけるGn受容体数との関連性について調べ、冬眠性哺乳類の生殖腺機能調節は標的細胞の受容体数の変化に依存した。5)季節繁殖性を示すハムスターを用い、光周期や寒冷に対するGnRH細胞と下垂体Gn細胞の変化を解析した。短日処理は細胞からのGnRH分泌能を低下させ、寒冷環境下の短日処理はさらに分泌能を低下させた。この結果は日永が短く、気温の低い冬に生殖腺が退化することをよく説明している。
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