研究概要 |
雄マウスの精巣を摘出し,1,2,3および5日後の前立腺,副精巣,精嚢の重量,DNA断片化,3'-エンドラベリング法によるアポトーシス細胞の定量化を行うとともに,mRNAを抽出し,RT-PCR法によりTGF-β1.2.3,TNF-α,TNFreceptor,Fas,Fas-ligand,KGF,androgen receptor,cathepinD,SGP-2等の発現を調べた。この結果,精巣摘出により器官重量の減少,DNA断片化が認められ,アポトーシス細胞の率が有意に増加した。これに伴い,前立腺では,TNF-α,TGF-β1のmRNA発現が増加した。また,副精巣では,TGF-β3,TNF-α,TNF receptor,FasのmRNA発現が増加した。タンパクレベルでは,Fas,TNF-αの増加がウエスタンブロットにより明らかとなった。次に,細胞培養系を用いて,FasおよびTNF-αが前立腺,副精巣のアポトーシスを直接的に誘導するか否かを調べた。p53ノックアウトマウスからこれらの器官を摘出し,10%血清を含む培養液で細胞培養し,抗Fas抗体およびTNF-αを添加したところ,抗Fas抗体では24時間以内に60%以上の細胞が死に,TNF-α単独では細胞死は誘導しなかった。しかし,アクチノマイシンDの共存下では,抗Fas抗体は約95%,TNF-αは約85%の細胞を殺した。また,機能的なFas(lpr,lprcg)あるいはFas-ligand(gld)をもたない、あるいはその両方を持たないマウス(gld/lpr)でも精巣摘出により、前立腺,副精巣ともに細胞死が誘導された。以上の結果から,Fas系およびTNF-α系が雄生殖腺附属器官の細胞死に独立に関与していることが明らかとなった。さらに,雌マウス生殖腺附属器官,乳腺,脱落膜,精巣のアポトーシス機構も調べている。
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