研究概要 |
完全変態昆虫の幼虫体液中には、「貯蔵タンパク質」と総称される分子量約500,000の6量体タンパク質が高濃度に依存する。これらタンパク質は幼虫摂食期の脂肪体で大量に合成され体液中に分泌されるが、摂食停止期から蛹期にかけて脂肪体細胞に選択的に再吸収され、タンパク質顆粒として貯蔵される。本研究では昆虫脂肪体におけるタンパク質の選択的取り込み機構を解明するため、カイコ貯蔵タンパク質SP1を対象として、SP1結合タンパク質の脂肪体細胞における局在性の解析とSP1結合タンパク質cDNAのクローニングおよびその機構解析を目的とした。 精製SP1結合タンパク質に対するポリクローン抗体を用いて免疫電顕法によりこのタンパク質の細胞内局在を調べた結果、SP1結合タンパク質が細胞内膜系および基底膜近傍に集中していることが示唆された。また、イムノブロット法による解析の結果、SP1結合タンパク質は、5齢幼虫中期から終期の脂肪体で発現し、蛹期には消失することが判明した。 SP1結合タンパク質に対するcDNAクローニングのため、カイコ脂肪体cDNA発現ライブラリーを抗SP1抗体をプローブとしてスクリーニングし、0.6〜2.6kbのインサートDNAを有する数株のSP1結合タンパク質cDNAクローンが単離された。このcDNAをプローブとしたRNAブロット解析から、5齢中期脂肪体細胞中には約3kbのSP1結合タンパク質mRNAが存在し,幼虫終期には消失することが確認された。 cDNAの部分塩基配列より推定された197アミノ酸残基からなる一次構造中には。推定糖鎖結合配列が2箇所確認された。コンピューターによるDNAデータベースの検索の結果、この一次構造と類似性を示すタンパク質は検出されなかった。
|