シダ植物のバイオシステマティクスの研究のため、目的の2植物群についての研究と、それに関連する手法を用いた研究によって、以下の成果をあげることができた。 1)ホウビシダ属については、東南アジア大陸部の種を中心に、分子系統学の手法を駆使して種生物学的研究を行った。この結果、a)タイ北部で発見された一型は新種であることが判明し、ウスバクジャクモドキ(仮称)と名付け、公表の準備を行った。b)東南アジア大陸部に生育する種について、詳細な比較研究ができたので、種属誌的とりまとめを行うべく、論文の準備を行っている。 2)コケシノブ科については、マレーシア植物誌のための種属誌的研究を継続しており、本研究によって、大幅な進歩が見られた。また、統括的に資料を集成する研究と平行して、特定種の解析的研究も、ウチワゴケ等を材料に推進した。a)植物誌の原稿は大まかな姿を整え、わずかな補完をすれば印刷に回せる状態に至っている。b)ウチワゴケについては、東南アジアに生育する多型な変異種についても材料の収集を行い、イソ酵素をマーカーとする多型の解析を行うべく、研究を推進した。しかし、シダ一般に広く用いられるようになっている研究手法では、この材料では良い結果が得られず、本研究では、解析の技法を確立するに止まった。これだけでは、論文にまとまるところまではいかないが、技法が整ったことから、次の段階で、良い研究成果が得られることはほぼ確実である。 3)ウチワゴケの研究の過程で、イソ酵素を用いた種内多型の解析をナンカイイタチシダの変異の解析に応用し、成果を論文にまとめた。本研究の副産物として、この研究課題に貢献するものである。
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