8年度には、まず、日本に分布するすべてのヨーロッパアカガエル群のタクサについてミトコンドリアDNAの解析を行なった結果を国際誌に印刷公表した。ここでは、従来より範囲を広め、チトクローム_b遺伝子全塩基対の約半分に当たる600塩基対について決定された配列に基づいて系統関係が推定されている。 ついで、ほとんどの種の組織を入手することに成功した中国産のヨーロッパアカガエル群のカエル類についての解析を進め、まず、系統分類学的に「鍵」となる泰伶山脈産のチュウゴクアカガエル(染色体数24本)について、600塩基対ほどの配列を決定し、日本産の染色体数24本の3種、ヤマアカガエル、エソアカガエル、チョウセンヤマアカガエルと比較した。この結果、チュウゴクアカガエルはこれら3種とはかなり異なるものの、染色体数26本のニホンアカガエルとは群をなさず、やはり同数の染色体をもつものが1群をなすことが判明した。泰伶山脈産のチュウゴクアカガエルと他種の遺伝的関係を明らかにしたのはこれが初めてであり、この結果を国際誌に投稿中である。他の中国産をはじめ、台湾産、ロシア産のヨーロッパアカガエル群のカエル類についても、すでに塩基配列の決定を終え、目下系統関係の解析中である。 さらに、東南アジア産のアカガエル科の代表属についても、塩基配列決定の作業を終え、一部は系統関係の解析をも終えている。しかし、属間の関係という高次のレベルでは予想以上に塩基の置換が著しく、形態、生態などの資料から想定される関係と整合性のある結果が必ずしも得られていない。現在、より妥当な関係を得るべく属数、種数を増やして再実験を行っているところである。
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