素粒子実験において用いられるハドロン弁別のための検出器は、エネルギー検出器の内側に置かれることから物質量を極力減らし、さらに、運動量測定用強磁場中にさらされる事より、磁場に対し十分な分解能を保つ必要がある。ハドロン弁別検出器の1つであるチェレンコフ光を用いたタイプのものでは、安定性、高増倍率である光電子増倍管が用いられるが、特に磁場に強いタイプであるファインメッシュタイプのものは利用経験が浅く、特性を詳細に調べる必要がある。実験の結果以下のことがわかった。 ・磁場1.5テスラ中での増幅率の低下はおよそ千分の一であること。 ・磁場方向に対し光電子増倍管を傾けることによりおよそ10倍の増幅率の向上が見られること。 ・有効光電子数を様々な条件下にて測定した結果、磁場の強さ、磁場軸からの傾きに対し急激な劣化は見られず、分解能が保たれること。 ・光電子増倍管に供給する高電圧を上げることで、分解能の改善されること。 また、長期安定性を調べるため、モニター系の確立が必要となるが、測定を迅速に行うため、人工光源を光電子増倍管まで導く必要がある。光源としてLEDを用い、光ファイバーにて光を導くことを試み、実際にエアロジェルを用いたハドロン検出器にて生成される光(チェレンコフ光)と同等の光量を得ることに見通しがつきつつある。実際のチェレンコフ光と同程度の波長の光を発生するLEDが最近になって開発されたため、現在これを用いて測定を試みている。
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