チェレンコフ光を用いたハドロン弁別検出器を、素粒子実験にて利用する際、その長期安定性が問題となる。一般にチェレンコフ光の光検出部に用いられる光電子増倍管の安定性とともに、チェレンコフ光発生部自体の劣化度をいかにモニターするかが長期使用の際の鍵となる。 モニターは一定光量を発する人工光源をチェレンコフ光発生部に入射させることで実現可能である。そこで、光源自体の環境温度依存性および長期安定性を実験した。光源はチェレンコフ光の波長に近い青色を発するGaNLEDを用いた。結果として、LED光源発光量のふらつきが、時間変動に対しては40日間で2%以下であること、環境温度変化5℃から70℃に対しては0.2%以下であり、モニター系の光源として十分に使用できることがわかった。 こういった光源を大規模実験(1000以上の検出器数)への応用する際、少数からなる共通光源からなるべく多数の検出器へ光を分配する方式が光源制御の面で優れている。そこで、光源から光分配器を経由して検出器にいたる最適なシステムの研究を行った。1入力16出力の分配器で、出力側のファイバー径を約100μmとしたときに、入力側のファイバー径の異なる各種光分配器(外径100μm〜700μm)をテストした結果、400μm径のものが十分な光量を得る一方で90%以上の一様性を得、最適条件であることがわかった。 一方、チェレンコフ輻射体として用いられるエアロジェルに関しては、光に対する吸収長と散乱長について経験的関係式しか得られておらず、その素過程からの理解が待たれている。現在、計算機を用いてシミュレーションにより光を追跡することで、散乱・吸収を求めるべく準備を進めている。
|