La_<2-x>Ba_xCuO_4系銅酸化物超伝導体では、酸素八面体の傾きに伴う低温(T_1〜60K)の構造相転移により電子系に異常が起き超伝導が著しく抑制される。この構造相転移は圧力により容易に抑制でき、Tcも30K以上まで回復する。しかし、x=0.125のごく近傍だけはTcの回復が10K止まりで、この領域ではT_1での構造相転移以外に未知の超伝導の抑制機構が存在する。一方、Laの一部をNdで置き換えることにより構造相転移温度T_1は100K以上の温度へシフトするが、電子系が異常を示す温度(〜60K)は変化しない。このため電子系異常は(酸素八面体の傾きに起因する)構造相転移との無関係との主張がある。 本研究では、La-Nd-Ba系について、熱膨張率、交流磁化率、電気抵抗の測定から高圧下におけるT_1での構造相転移および超伝導特性を調べた。その結果、La-Nd-Ba系に圧力を印加するとT_1が低下し、ある圧力以上で構造相転移と電子系の異常が再び同一温度で起こるようになることを明らかにした。この結果は、〜60K付近の電子系異常にとってやはり酸素八面体の傾きが重要な役割を担っていることを意味している。また、2Gpaの圧力を加えて構造相転移を完全に抑制した場合、x=0.125でのTcの回復がLa-Ba系よりもLa-Nd-Ba系のほうが大きいことが分かった。これは、構造相転移以外の超伝導抑制機構がNdの添加によって弱められるためである。今後、高圧下でのNQR等から、この超伝導抑制機構を具体的に明らかにしていきたい。
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